炭でやくねん|SUMI de yakunen

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CONCEPT
大阪北新地の鉄骨造のテナントビル2階に立地するこの店は、主に炭火焼きによる魚の一夜干しと地酒、小朝雨を提供する店である。10坪という限られた店内で私が選択した手法は“張りぼて”的な方法で化粧された異空間に仕立てるのではなく、ALC板の壁やコンクリートの壁に囲まれているスケルトン状態のボイドスペースの中に、竹によるミニマルなストラクチュァを挿入することで新たなる空間を創出することであった。

この竹の架構は、京都の伏見稲荷大社の千本鳥居にイメージを発している。2本の柱間にしめ縄を張ったものが鳥居の原型であるという説があるが、今回は2本の柱材と柱間を繋ぐ材の合計3本の竹の連続による簡素な構成により空間あるいは領域を示す架構を形成しようと努めた。

鳥居とは本来、神域と現世との結界を意味している。そう考えれば、伏見稲荷の連なる鳥居は神域と現世とを結ぶくうかんであり、神域、現世のどちらにも属さない曖昧な空間ととらえることができる。この店の空間も、様々な視点に置ける2つの極点を結び隔てる“移動の空間”として考え、入り口から店内奧まで鳥居城の竹架構を連続させた。架構の終わりに設置した光の壁は、移動のための空間の結末を消去し、移ろい続ける空間であることを表現している。

この空間は、ある合間を自由に浮遊するための空間である。ある極点にしがみつくのではなく、移動することによって現れてくるものがあるのではなかろうか。



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