YANMAR SUNSET MARINA CLUB HOUSE

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CONCEPT

■地域そしてびわ湖のシンボルとしてのマリーナ計画
琵琶湖ヨットマリーナクラブハウスの計画である。施主であるヤンマーは「持続可能な未来」をつくり出すことを目標に、自然環境、人間環境を豊かにすることを唱え、創業より100年間エネルギー、テクノロジーの開発を行ってきている。海(マリーン)から大地(農)まで横断して活動するヤンマーのビジョンを体現するようマリーナ全体の計画を考えてきた。びわ湖の自然環境(エコトーン)を再生すると同時に訪れる人々が湖や敷地内の自然環境に包まれながら、光、風、水、土や木など自然の恵みを十分に感じとれる豊かな空間をつくろうとした。

■セトレマリーナびわ湖からの継承と発展
2013年に完成したセトレマリーナびわ湖に隣接して、今回マリーナクラブ会員に向けたゲストハウスの増築を行った。「エコトーンの再生」をテーマに敷地内環境を考え、屋上や外構を可能な限り緑化することにより地表や建物外皮の表面温度を下げ、建築に降り注が れる雨水を貯留するビオトープを追加することにより、生態系の生息地を増やす等、生物のプラットフォームとしての役割を強化させた。

2棟は2 階のブリッジで繋がっており、婚礼の際には一体的な利用も行われる。セトレマリーナびわ湖では屋根や床スラブを折半させることにより、光や琵琶湖からの風を取り入れるよう建築操作を行ったが、今回は建築の外皮を土のシェルで覆い、建築の内外に陰影をつくり、光と風を室内に導いている。屋根シェルがスラブを支えることにより、内部に壁や柱を極力落とさず、1階パブリックスペースを広く使いやすく、琵琶湖への視線を遮断しないよう工夫を行った。グランドレベルと上階との連続性を持たせるため、東側にグランドレベルから2,3 階にそのままアクセスできるよう斜面状のスラブを設け、外部階段を設置している。3 階には開放されたパブリックスペースとして、テラス、ラウンジ、バー、サウナ、プールを設け、琵琶湖への眺望とリラクゼーションを楽しめる。マリーナに着目し、客室、パブリックスペースの机や椅子、建具の取手のデザインには船の滑らかな曲線を彷彿とさせるようなデザインを取り入れている。

■土や葦など自然素材と伝統構法の応用
主体構造はRC 造ではあるが、建築を構成する素材に、地域で採れる自然素材を極力用いようと考えた。建築を覆うRC シェルは滋賀信楽、竜王の土を基本としたドイツ壁で仕上げており、客室を隔てる界壁も同様の土を使った版築壁とした。1 階のロビー床は蓄熱、蓄冷を考慮して三和土土間とし、ラウンジの床は信楽の土を焼いたタイルとしている。1 階レストランとミーティングルームの壁は土を用いた中塗壁とし、鏝で押さえた仕上、ひびを現した仕上としている。また一部の浴室の床壁仕上げにも土とセメントを混ぜた左官仕上を採用した。

建築の内外の仕上を可能な限り木質化することを考え、パブリックスペース、客室の外部建具は全て木製建具とし、内外壁には杉板、床には桜、ナラ材を用い、造作家具には杉やヒノキ材を用いた。一階のレセプションの背後壁面には、地元職人による琵琶湖のヨシを使用した壁仕上げとし、地域の伝統産業を用いて来訪者を迎えるエントランス空間を作ろうと考えた。

■自然現象を感じる空間
各階共に、外部建具は西側の琵琶湖側を大型引戸としており、開放して外部デッキ、テラスとの一体的な利用が可能である。反対側の東面はほぼ全て開放できる開戸としており、風が心地よい季節には建具の開閉を調整することにより、建物内に琵琶湖からふく自然通風を取り入れる様にし、中間期に機械空調を削減できる様に考えた。1 階東側は事務室や機械室等のバックスペースのボリュームが必要であったため、東側の屋上緑化上に抜ける様に天井内に通風スペースと通風窓を設け、自然通風を確保できるよう工夫をした。琵琶湖に反射する光は客室のスラブに反射し、全面開口の木製建具より室内に自然光を届ける。既存ホテル同様、雨水の循環システムを建築に取り入れた。建築に落ちる雨水は全て敷地西側に配置した琵琶湖の生態系が宿るビオトープに集水され、満水となった水は琵琶湖へと還っていく様に計画した。通常竪樋として排水される雨水も、ガーゴイルや鎖取下に集水壺を設け、雨上がりに視覚的に雨水を楽しむことができるように工夫をした。

また、既存のチャペルで行ったエオリアンハープによる琵琶湖の風と共鳴する音響システムを、今回は宿泊者が体感できるよう考え、2階のパブリックスペースの建具枠に、三本の弦を取りつけ、琵琶湖が届ける風の音を聞けるように計画した。



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