YAMMAR SYMBIOSIS
CONCEPT
■時を繋ぐ共生/工業化建築と農的建築の融合
グラスハウスは、産業革命を背景に19世紀のイギリスで、規格生産、プレファブリケーション、大量生産という生産システムの構築と共に発展した近代を象徴する建築様式であり、戦後の日本においても農業用温室を中心に普及した。一方で,各地方には地域の人びとが地域の素材を用い、地域に根ざした技術や知恵によってつくり上げる土着の建築がある。それらは人間の生活圏の木、草、土などを用いてつくる民家が該当する。しかし、戦後の都市はもちろん、郊外住宅地、ましてや田園風景の残る地方においても、住宅や建築の工業化が進み、農的な民家の姿はほとんど見られなくなった。
今回の計画では、人間、自然、社会、地域、他の生命との「共生」を命題に抱えたクライアントと共に、SYMBIOSIS(共生)を問い直したいと考えた。生命は「共生」によって可能性を広げ、進化を遂げてきた。「共生」は、互いに依存し合う関係が必要であり,他の生命と共に互いの利益がある関係でなければ続かない。「共生」の関係をいかにつくるかを考えた。
これまでは単なる生産温室であった施設から人びとが「共に生きていること」を体感できる観光農園として再生するために、地域の農的な循環を重要視し、自然素材や生物が息づく温室カフェ・キッズルームと国産の南国植物や琵琶湖地域の遺伝子を持つ植物による温室内外の庭を計画した。
1980年代に建設されたグラスハウス5棟が建ち並ぶ既存施設のうち、大小ふたつのガラスハウス棟を、温室カフェとキッズスペースへと機能転換を行った。温室カフェでは、近代の工業化建築である農業用温室の内部に入れ子状に農的な手法による茅葺建築を挿入した。敷地内で採取した竹によるレシプロカル構造を主構造とし、クグ、葦と稲藁による茅で屋根を葺き、版築壁や土壁でカフェ空間をつくった。キッズルームでは、子どもたちが魚、植物が連関した生態を学べるように滋賀県産ヒノキ材による三方格子で構成したアクアポニックスを計画した。
通常グラスハウスは、温熱環境的に人が居続ける場所としては快適ではない。また、民家は、その耐候性、メンテナンス性において現代人にとっては維持が困難な状況であり、消滅しつつある。工業的なグラスハウスが鞘堂のように農的な民家を内包することによって、互いの弱点を補完し合い共存できると考えた。今後、全国に余りある工業化した生産システムに組み込まれた建築群に農的建築を取り戻すひとつの再生の手法として提案する。そしてこれからの建築は、人間の利益のためだけに存在するのではなく、人間を取り巻く環境全てが豊かになるように、生命の相互作用を意識した共生の状態をつくる使命を持つと考える。
◯自然な竹が生み出す形態と空間
枝を落としただけの自然な長尺丸竹を曲げて組み合わせるドームである。
根元が太く先端が細い竹を自然に曲げて構成するため、任意の形状にはできない。竹の曲げ形状と耐力を検証しながら、以下の手順で建物形態を決めていった。
- 断面寸法の定式化
太さと肉厚が連続的に変化する丸竹の断面寸法を定式化(ここでは、今までの研究成果を用いた) - 室内試験による曲げ耐力の把握と設計許容耐力の設定
採取した丸竹の曲げ強度試験により曲げ耐力を確認し、設計許容耐力を設定 - 幾何学的非線形解析により初期形状の決定
(1.)で定式化した部材の曲げ幾何学的非線形解析を行い、②で設定した許容耐力に収まる曲げ形状(初期形状でどこまで曲げることが出来るか)を決定 - 長尺竹の実大曲げ試験による検証
採取した丸竹で長尺曲げ試験を行い、(2.)(3.)の妥当性を検証 - 竹の限界曲げ形状で構成できる全体架構形状の設計
(3.)で求めた形状で構成できる全体架構形状の設計。当初計画した形状では限界曲げ形状を超えるため、足元の倒れ角を大きくして限界形状に収まるようにスタディを行った。 - 立体架構解析による安全性の検証
立体架構解析により屋根荷重および地震荷重による断面力を算出し、(3.)で求めた初期曲げによる断面力を加算して断面検討を行う。
◯地域循環をつくる建築
敷地内そして近隣の竹藪からモウソウ竹を刈り取り、丸竹のまま温室カフェの主要構造材として利用している。またそれらから割竹をつくり、屋根の下地材としている。茅葺屋根の下地のくぐは、周辺の湿地から表面材の稲藁は周辺農地から確保した。壁の土も周辺地域から確保した。建築時だけでなく、今後のメンテナンスにおいても人々が周辺環境と循環的な関係性を築き、建築を生きながらせていくことを想定している。
◯植栽計画
温室内の農的建築の周囲には、バナナやコーヒーをはじめとした多種多様な南国植物や滋賀県産のハーブが共生するコンパニオンプランツによるエディブル(食べられる)ガーデンを計画した。外構では、敷地内で採取した種子から育てた地域固有種の広葉樹の苗木を植樹し、将来的には森のようになる事を期待している。
◯アクアポニックス
子供たちの身体スケールに合わせて45㎜ヒノキ角材を用いた450mmグリッドの三方格子組による本棚をつくった。金物を一切使わない三方格子に合わせて天板はパネル化によるはめ込み式とし、今後の使い方によってカスタマイズできる計画とした。この立体格子には水槽、プランターや本が置かれ、子供達の椅子や机として利用できる計画としている。また、立体格子内には湖魚と植物が共生を観測できるアクアポニックスシステムを計画した。魚の糞尿等から発生するアンモニアを硝酸まで酸化させ、植物の肥料として利用するシステムである。
| LOCATION | Ritto, Shiga, Japan |
|---|---|
| CATEGORY | COMMERCIAL |
| TYPE | - |
| DATE | 2024 |
| STATUS | complited |
| SCALE | 398.69m² |
| STRUCTURE | Bomboo |
| CLIENT | Yanmar Symbiosis Corporation |
| CONSTRUCTOR | Kukunoya |
| COLLABORATORS | Hirokazu Toki (University of Shiga Prefecture), Shunya Takahashi, Eri Imose |
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